伊坂13冊目の中短編集『フィッシュストーリー』(新潮文庫刊)のなかの中編「ポテチ」。
伊坂作品の素敵などんでん返しを濱田岳、大森南朋が紡いでいきます。
いくつかの伊坂作品の映像化の中でも、短編の映像化となっており気軽に見れる作品となっていますね。
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目次
ぽてち
公開 | 2007年 |
監督 | 中村義洋 |
原作 | 伊坂幸太郎 |
本編 | 68分 |
出演 | 濱田岳 木村文乃 大森南朋 石田えり 他 齋藤和義-音楽 |

あらすじ
『ポテチ』は、伊坂幸太郎の短編小説「ポテチ」を原作とした、日常の中に奇跡が潜むユーモラスなヒューマンドラマです。仙台を舞台に、泥棒の今村忠治(濱田岳)とその恋人・大西若葉(木村文乃)、今村が憧れる泥棒の黒澤(大森南朋)、プロ野球選手・尾崎(阿部亮平)が織りなす、不思議で心温まる物語が展開します。
ある日、今村は空き巣に入った家で、偶然にも自分が応援するプロ野球選手・尾崎の家と知ります。しかし、金品を盗む代わりに、尾崎が大事にしていた野球ボールを手にして家を後にします。その後も、尾崎にまつわる出来事が続き、やがて彼との意外なつながりが明らかになります。物語は、ちょっとした出来事が思わぬ形で人を結びつけ、人生を変える力を持つことをユーモアたっぷりに描きます。
見どころ

1. キャラクターの魅力
濱田岳演じる今村の愛嬌たっぷりの泥棒像は、観客に親しみを与えます。泥棒でありながらどこか憎めず、むしろ応援したくなるキャラクターです。また、木村文乃演じる大西の無邪気さと大森南朋演じる黒澤の真面目でありながらどこか抜けている性格も、物語に軽妙なリズムを生み出しています。
2. 日常の中の奇跡の描写
物語は、特別な事件や派手な展開ではなく、日常のささやかな出来事が積み重なり、不思議な奇跡へとつながっていく様子を丁寧に描いています。尾崎の家に空き巣に入ったことがきっかけで明かされる人間関係の偶然性は、観客に「人生は何が起こるかわからない」という感慨を抱かせます。
3. 伊坂幸太郎作品ならではの温かさとユーモア
原作の持つ独特のユーモアと、人間味溢れる温かさが映画でもしっかりと活かされています。どんなに奇妙な設定であってもキャラクターたちのやり取りがリアルで、くすっとした笑いや共感を与えます。
4. 仙台のローカル感と風景描写
仙台という舞台設定が物語の空気感を彩ります。街の風景や地元感あふれる描写が、作品に親近感を与えています。地元の人にとっては特に嬉しいポイントでしょう。
5. ちょうど良い尺感とテンポ
短編原作を映画化したことで、無駄のないコンパクトな構成と軽快なテンポが保たれています。映画の尺(68分)も観客に負担を感じさせず、ストーリーがスムーズに進行します。
感想とネタバレ

『ポテチ』は、大きなドラマや感動を求める作品ではありませんが、日常の中に潜むささやかな奇跡やユーモアを心地よく楽しむことができる映画です。
濱田岳や木村文乃、大森南朋といったキャスト陣の演技も魅力的で、観客に温かい気持ちを残します。
ただし、派手な展開や深いメッセージ性を求める観客には少し物足りないかもしれません。
僕はこの伊坂幸太郎×中村義洋の作品って意外と好きで、他にも「フィッシュストーリー」「ゴールデンスランバー」「アヒルと鴨のコインロッカー」とあります。
中でも、ゴールデンスランバーは書籍も映画も本当に良かった。(じゃあそっち書きなよ)
子供の取り違えがネタになっているこちらの作品でタイトルのポテチはそのままポテトチップスでしょう。
車内のシーン今村が大西にポテチのコンソメ味とうすしお味を渡し間違えてしまいます。
その際の、コンソメとうすしおの味の違いが分かるのか!?というセリフにもクスッとしてしまうのですがその辺はさすがの伊坂ワールドだなと感じます。
気をつけろよ!と大西が怒鳴ったあとに「やっぱいいや。」とうすしお味を再び食べようとしたときに今村が泣き始めます。
車内にいた大西と黒澤はなぜ泣いているのか分かりません。
取り違えられたまま受け入れられている現実と自分の環境が相まってしまって泣いているんでしょうね。
評価:★★★★☆
完全に好みの問題ですが。
コンパクトで心温まるヒューマンドラマ。伊坂幸太郎の世界観が好きな人、軽い気持ちで楽しめる映画を求めている人に特におすすめです。
この短い尺の中でしっかり伊坂ワールドを展開している作品なのではじめての伊坂作品にしてみても良さそうです!

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