【映画】中小企業VS大手リコール隠し「空飛ぶタイヤ」を見た感想とネタバレ

こんにちはツムリです。

私事ですが引っ越しをしまして、片付けに追われておりました。

雨も良く降るし、この時期の引っ越しの件数が少ないというのも納得。苦笑

さて、今回は、映画「空飛ぶタイヤ」の感想とネタバレについて。

原作は、実際にあったリコール隠しを題材に書かれた小説で、ドラマ、映画、コミカライズと様々な作品に生まれ変わっている人気作品ですね。

空飛ぶタイヤ

原作は池井戸潤さんによる小説で2018年映画化。

主演、長瀬智也。

池井戸さんにとっては、初の映画化だったようです。

あらすじ

空飛ぶタイヤ

父親のあとを継ぎ、運送会社の社長になった赤松徳郎(長瀬智也)のもとに、一本の電話がかかってくる。

自社のトラックが脱輪事故を起こし、死傷者を出してしまう。

警察からは整備不良を疑われ、執拗な捜査を受け、会社の信用も無くしてしまい倒産に追い込まれる。

しかし、同じような事故が起こっていることを知り、整備不良ではなく、車両の欠陥があったのではと考え、家族や従業員のためにトラックの販売元である大手自動車メーカーに戦いを挑んでいく。

みどころ

空飛ぶタイヤ

赤松徳郎の人望

実際のところ社長に魅力が無いと中小企業は成り立たないんじゃないかと思っています。

従業員が、赤松社長に惚れていることを思わせるシーンがいくつか出てきます。

整備士の門田駿一(阿部 顕嵐)が会社の倒産を予期した専務の宮代直吉(笹野高史)から、別の仕事先の紹介をするよ。といった話をされた時、「社長はまだ諦めてないんですよね!?じゃあおれは社長について行きます!」と社長への信頼を見せた。

すると他の整備士たちも、おれらもついて行きます!と声を揃えたシーンは、社長と会社への愛が伝わってぐっと来ました。

また、専務の宮代は先代社長のころからの従業員で、現社長の赤松徳郎をずっと見てきており、まだまだ自分が力になってあげないといけないな。という親心にも似たような心情を抱いています。

社長の判断に反対することは基本的にないですが、そっと添えるアドバイスなんかも素敵で映画に必要な名脇役だなぁと。

しかし、反対に社長の意志にはついていけないと言う従業員も出てきます。

従業員の高嶋靖志(大倉孝二)は事故の後、取引先を失った状況や、後ろ指を指される生活に限界を感じ辞表を出します。

一緒に戦ってくれた戦友として、赤松は感謝を伝えると共に次の仕事先を探す手伝うように専務に告げるのでした。

こんな人の下で働くのは悪くないなぁ。

ホープ自動車 販売部課長 沢田 の思い

赤松運送のトラックの販売元のホープ自動車。

販売部課長の沢田(ディーン・フジオカ)のもとに、何度も赤松社長から再調査以来の連絡が来るが、最初まったく取り合わなかった。

というのも、事故の原因を解明すべく、事故を起こしたトラックを回収、検査をし、その原因が整備不良と断定されたからだった。

何度、自分に連絡をもらっても、結果が変わるわけじゃないと電話にも出なかったが、そのことについて品質保証部の室井(和田聰宏)が様子を見に来たことに違和感を覚え、車両製造部課長の小牧(ムロツヨシ)に連絡をとる。

小さなひずみが大きくなり、1度起こしている不祥事をまた起こしたとなれば、会社がもう立て直せないのではないかという不安から、真実を探り始める。

沢田の面白いところは、赤松と同じものを探るようになりながらも、大手企業の人間というバランスは崩さず、自分自身の正義に向かって走る姿。

内部告発の準備をし、自分のスタンスや地位はしっかりと守る仕事の出来る男という部分でかっこよかった。

ディーン・フジオカさんイケメン過ぎる。

それぞれの正義

赤松、沢田、井崎(高橋一生)ともに、各々の立場から、相手や世間のことなどとくに考えずに、自分や守るべき家族、仲間の為の正義を貫きます。

今作の巨悪の根源、ホープ自動車 常務取締役狩野威(岸部一徳)のリコール隠しに対し、赤松は車両欠陥の究明。沢田はリコール隠しの真実。井崎は、不正融資の反対。

と各々の正義に基づく行動をとっていますが、敵の敵は味方という訳ではない部分がとてもよく出来ていると思いました。

その戦いの中で、立場を悪くすることもありましたが、その三者の共通の願いが叶った、ホープ自動車家宅捜索。

一度不具合によって廃棄されたパソコンを、リコール隠しに疑問を感じていたホープ自動車品質保証部の杉本元 (中村蒼)が直し、その中にリコール隠しの会議「T会議」の資料が残されており、そのパソコンが捜査の決め手になりました。

インタビュー

美しい短編小説のような映画にしていただきました(池井戸)

TSUTAYA newsより引用

大人が楽しめる映画がなくなっている今、この映画を作れてよかった(本木)

TSUTAYA newsより引用

原作者(池井戸潤)×監督(本木克英)のインタビューでこんな風にコメントしていました。

インタビューの最後に次回作について少しだけ触れていたのでまたこのタッグが実現するかもしれません。

赤松のように何かと戦っている人は、自分の戦い方を冷静に、そして客観的に見られないと思うんです。どこか動物的になってしまってるというか。(長瀬智也)

otocotoより引用

沢田は赤松とは真逆ですごく人間的だなと思いました。出世欲がないわけじゃないし、企業のルールに反発する気持ちもありながら赤松社長を買収しようともする。ずっと車線変更を続けているような人です。(ディーン・フジオカ)

otocotoより引用

井崎自身も自分の中で何かが気持ち悪いとか正しいとか、真実を暴きたいという思いがあった。僕自身はそこを大事にしました。(高橋一生)

otocotoより引用

3人のインタビューでそれぞれの役に対し思うことや気をつけたことをまとめて見ました。

月並みですが、それぞれの生き方を自分で映し出せる役者さんはすごい。

レビュー

原作は大好きです。池井戸作品の中でも最長の長編ですし、読み応えのある作品です。池井戸さんが三菱銀行出身であることも、この作品にかける思いは並々ならぬものがあったのかと思います。やはりこの長編は、2時間で描ききるのは無理があるのかな・・・と思いました。綿密な部品不良の調査、赤松社長の社員に対する思い、不正に対する執念、財閥組織の闇、そのすべてが噛み合わさってクライマックスを迎えます。財閥だろうが、中小企業だろうが、不正を見過ごせない社員が必ずいることを、この作品は描いています。

AMAZON レビューより引用

死亡事故を起こした運送会社社長と、原因をひた隠しにする自動車会社という、大企業 VS 中小企業の対立の構図と財閥系グループである、自動車会社と銀行との法令順守の攻防を縦軸に、社員は家族と言い、経営難にもめげず正義を貫こうとする運送会社2代目社長と、大企業の中で閉鎖的な体質に翻弄されながらも、真実を見極めようと奮闘する営業課長、財閥系銀行の勤務しながらも融資係としての矜持を持ち続ける銀行員の仕事に対する姿勢や思いも描いている。原作、ドラマとも見ていないので、何の先入観もなく、純粋にエンターテインメントとして楽しめた。

AMAZON レビューより引用

まとめ

空飛ぶタイヤ

実話を下敷きにしている為、リアリティがあり良かったです。

映画ならではの展開のスピード感も楽しめましたし、それぞれの正義が絶妙に絡まり合い、社会的な話が一つのエンターテイメントとしてまとまっていました。

赤松運送、ホープ自動車、ホープ銀行、他にも泣き寝入りをした運送会社やそれぞれの家族など、今作にはたくさんの出演者がいました。

その一人一人の生活や背景が垣間見え、こんなやついないだろうと感じないのは池井戸さんのいう通り美しい短編小説のように仕上がっているからなんでしょうね。

僕は原作もドラマも見てなかったので、純粋に楽しめたのかもしれません。

原作もまた読んでみたいと思う作品でした。

社会的エンターテイメント「空飛ぶタイヤ」是非ご覧ください。

小話

さて、今回の題材のリコール隠しですが、実際に起こった事件として、2000年に運輸省の監査で発覚したリコール隠しをなんと、2004年にも同じ会社で別部門でも発覚するという事件がありました。

このリコール隠しで起きた死亡事故は、今作の中で触れている、横浜市での母子死傷事件に加え、山口県で、高速道路を走行中にブレーキが利かなくなるという死亡事故の2件。

このリコール隠しで信頼を失い、筆頭株主であったクライスラーからも財政支援の打ち切りを受け、深刻な経営不振に陥った。

しかし、そこは財閥。

三菱重工業、三菱商事、三菱東京UFJ銀行の様々な救済を受け倒産を免れ、今では事も無げに経営は続けられています。

そうです。

この話の下敷きになっていた会社は「三菱自動車」です。

原作の池井戸さんは、三菱銀行に勤めていたようなので、今作に駆ける思いも何かあったんじゃないでしょうか。

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