【映画】「恋妻家宮本」あらすじネタバレと感想。阿部寛、安定のちょいダメ男

こんにちは。つむりです。

「家政婦のミタ」や「女王の教室」などを手掛けてきた脚本家の遊川和彦さんの監督デビュー作「恋妻家宮本」を見ました。

原作は重松清さんの「ファミレス」

原作を元に監督自ら脚本しており、自信作と呼ぶにふさわしい作品でした。

心温まるだけではなく深く考えさせられる映画でした。

家族に対し、自分に何が出来るか分からないと悩んでいる方は是非ご覧になってください。

恋妻家宮本

公開2017年
原作重松清(ファミレス上・下)
監督遊川和彦
脚本遊川和彦
本編117分
出演阿部寛
天海祐希
菅野美穂
相武紗季
工藤阿須加
早見あかり
奥貫薫
佐藤二朗
富司純子
…etc

恋妻家【こいさいか】

妻への思いに改めて気がついた夫のこと。
言葉にすると新しいけれど、
世界中の夫のなかに必ず眠っている気持ち。

※愛妻家のようにうまく愛情表現出来ないので、気持ちが伝わりにくいのが欠点。

公式ではこのような説明がありました。

造語ですが、妻に恋をしていると考えると胸にすとんと落ちますね。

「恋妻家宮本」のあらすじネタバレ

恋妻家宮本

ある日、ファミリーレストラン「デニーズ」に宮本陽平(阿部寛)と妻の美代子(天海祐希)が訪れます。

早々に注文を決めた美代子とは反対に、ずっと悩んでいる陽平。

「人生は一度しかないから失敗をしたくない」という思いを子供の頃から抱いており、品数の多いファミレスはどこか苦手と感じていました。

そんな中、美代子と出会った大学生時代のことを思い出します。

3対3の合コンの席で、それも同じくファミレスでした。

友達2人がそれぞれ相手を選び、残った美代子を見ながら、「残り物には福がある」「逃した魚は大きい」の二つが脳内でぐるぐると回っていた陽平はこの時も決断力は無かったようです。

その後、付き合い始めた美代子から「子供が出来た」と告げられます。が、教師試験をひかえた美代子は、自分の試験と、大学院に進む陽平のことを考え子供を諦めようとします。

すると陽平は自分が大学院を諦めて教師になるから結婚しないかとプロポーズをします。その時は愛情よりも責任感が多かったと当時を振り返りながら思います。

恋妻家宮本

子供が生まれ、あっという間に月日が流れていきました。

息子の正も成人し結婚。被災地の取材をしたいと新聞社に就職し、福島に引っ越していきました。

そして、50歳になった2人は夫婦2人きりになります。

恋妻家宮本

正と優美の結婚の報告を受けたファミレスから家に帰ると、美代子が「これからは2人きりだから仲良くしないとね。」と陽平を晩酌に誘います。

「何か作って。」という美代子のリクエストに陽平は手際よくおつまみを作ります。料理をしている生き生きとした表情を見て少し表情を曇らせる美代子。

お酒が進み、美代子は「これからはお父さん、お母さんじゃなくて名前で呼び合いましょ。」と言い始めますが、急な変化に陽平はたじたじになります。

恋妻家宮本

酔いつぶれて寝始めた美代子を見つめ「老けたなぁ。」と感じる陽平。

美代子に掛ける布団を取りに部屋に戻った際、これからまた本を読み直そうと、なんとなく本棚を物色します。

そして、一冊の本に目が留まります。

付き合い始めた時に、初めて貸した本「暗夜行路」でした。何となくその頃を思い出しながら手に取ると、本の間から何かが落ちました。

落ちた紙を拾い上げると、なんとその紙は離婚届で、しかも妻・美代子の欄はすべて記入されており、判子まで押してありました。

恋妻家宮本

陽平は事実を受け止めきれずに固まってしまいます。

その後、問い詰めるべきか見なかったことにするか悩みますが、結局何も出来ず、悶々としたまま朝を迎えます。

※以下はネタバレになりますので苦手な方はお気をつけください。

恋妻家宮本

翌朝も、離婚届の真意を聞き出せないまま学校に向かう陽平はあれこれと悩んでしまい、授業中も上の空でした。

家庭訪問があることを生徒に伝えると、クラスのムードメーカー的な存在の井上克也(浦上晟周)(あだ名はドン)が「先生ー!父親が海外赴任で母親が事故を起こして入院している場合はどうしたらいいですか?」と大きな声で聞いてきます。

ドンの母親は不倫相手とのドライブ中に事故に遭い、入院していました。

それを自虐ネタにしてクラスの笑いを取っていたドンでしたが、そのことで自分が陰口を言われないようにするドンの精一杯の抵抗でした。

陽平が教室から出ると、ドンのクラスメイト菊地原明美(紺野彩夏)(あだ名はメイミ―)から声を掛けられます。

メイミーはドンを心配し陽平を頼ってきますが、陽平の呑気な返答に苛立ち、先生に絶望してる!と言い、立ち去っていきます。

家庭訪問でドンの家を訪れると出迎えてくれたのは、ドンの祖母でした。

祖母は、ドンやドンの妹の前で母親を悪く言い、これからは自分が二人の面倒を見ると言い切ります。

家庭訪問を終え、陽平は料理教室に向かいます。

恋妻家宮本

モヤモヤする気持ちを忘れるように料理に没頭するのですが、同じグループの五十嵐真珠(菅野美穂)が離婚を考えていると知り、五十嵐と、同じグループの門倉すみれ(相武紗季)に女性が離婚届を隠しておく心境について尋ねます。

五十嵐から不倫の可能性を指摘され、ドンの母親のケースが頭をよぎった陽平は動揺し、美代子の携帯を盗み見ますが怪しい痕跡は見つけられませんでした。

恋妻家宮本

翌日、ドンが授業中に倒れます。

メイミーから、ドンが祖母に反発し何も食べていないことを聞いた陽平は、ドンを自分が顧問をしている料理教室に誘います。

しかし、ドンは現れず、仕方なく簡単な卵かけご飯のレシピをドンの家のポストに投函します。

家に帰った陽平は美代子との些細な話から離婚届を見たことを告げますが、美代子の無言の圧力に負け、料理教室の奥さんが持ってきたんだととっさに付け加えます。

恋妻家宮本

すると美代子は、「正の妻の優美が風邪をひいているから、明日、正のところへ行ってくる。」と言い、福島へ向かうことに。

翌日、ドンがレシピのお礼を言いに陽平のもとにやってきます。オムライスを教えて欲しいというドンの言葉に、再度料理クラブの勧誘をしますが、あっさり交わされます。

そこに現れたメイミーは、レシピを教えることは問題の先延ばしをしているにすぎないと非難し、陽平に対し教師に向いてないんじゃない?との言葉を投げつけます。

陽平はそれを聞き、教師になるべきじゃなかったとのかもしれないと自信を無くしてしまい、自分の別の人生を想像していました。

家に帰った陽平は、本棚の違和感に気づき「暗夜行路」を取り出してみると挟んでいたはずの離婚届けが無くなっていました。

慌てふためく陽平の元へ、息子・正から電話が掛かってきます。

美代子が「このまま当分福島にいようかな。」と漏らしたことで両親がケンカでもしたのかと心配する電話でした。

正から、「お父さんが料理を始めてからお母さんは少し元気が無くなったかも。」と告げられます。

料理教室に遅れてやってきた門倉は、陽平と五十嵐に料理教室を辞めることを告げます。婚約を解消したことで料理を学ぶ必要がなくなったとのことでした。

教室の後、陽平と五十嵐は飲みに行くことにします。

五十嵐は旦那とうまくいかない理由が自分とのセックスの相性なんじゃないかと、陽平に言いはじめ確かめてみようと持ち掛けてきます。

恋妻家宮本

戸惑いながらもラブホテルまで来たところで、五十嵐に旦那が倒れたと連絡が入ります。

大慌てで、病院に駆け込む五十嵐の後を何となくついてきてしまった陽平は病室で、五十嵐と旦那のやり取りを見て、こんな風にお互いの言いたい事を言い合うのも大事だなと感じます。

帰ろうと歩いていると、ドンが病室を覗いているのを見つけ、母親の病室に入れないドンに話かけますが何も言えず、また自信を無くしてしまうのでした。

家に帰ると美代子が帰って来ており、吉田拓郎の「今日までそして明日から」を流し始め思い出を語り始めます。

学生の頃みたいに飲もうという美代子に対し、こっちは疲れてるんだよと陽平が言い、とうとう離婚届を見たことを打ち明けます。

陽平の「なんで離婚届なんか書いたんだよ。」という質問と「不満はないけど、不安はあるの。」という答えを皮切りに、お互いの不満を言いはじめ口論になります。

恋妻家宮本

そして、美代子の「あなたって本当は結婚に向いてないよね。」という言葉をきっかけに、陽平は離婚届に署名し美代子に差し出します。

離婚届をを受け取り、帰ってきたばかりの荷物を持ち、美代子は家を出て行きます。

陽平はモヤモヤした気持ちのまま授業を行ういますが、生徒からテンションがおかしいと指摘されうまくいきませんでした。

放課後、ドンに様子を聞くと、カップ麺ばかり食べていることを知り、偶然を装いファミレスに連れて行きます。

恋妻家宮本

陽平は入院している母親にお弁当を作ろうと提案し、翌日、祖母が留守の間にお弁当を作る手伝いに行きます。

そこへ、祖母が帰宅し正論をまくしたててきますが、陽平は、正しいけど優しくない。と祖母を突っぱねます。

その言葉を聞いたドンと妹がそっと祖母の手を取り、ようやく少し打ち解けます。

恋妻家宮本

出来上がったお弁当を渡しに行きますが、直前でドンが逃げ出したため陽平が渡すことに。ドンの母親の胸の内を知り、会いたいと願う母親の元へドンと妹を送り出します。

するとエイミーから「やっぱり教師向いてるかも。」と言われ少し自分を好きになる陽平。

そこへ正から電話がきます。

福島へ行った美代子が、正に「アパートを借りてボランティアでも始めようかな」と言い出し、二人の署名の入った離婚届を見せられたことを告げます。

陽平は、料理を作りながら、自分の考えと向き合い、過去を振り返り始めます。その中で、自分の感情が少しずつ整理されていきます。

出来上がった弁当を持って福島の正の家に到着するが、美代子は家を出た後ですれ違ってしまいます。

最終の新幹線に乗るため駅へ向かう陽平は、正と優美からアドバイスを貰い最終の電車へと急ぐが階段でこけてしまい、その電車を逃してしまいます。

強打した膝を抱えていると、反対側のホームに美代子がいました。

恋妻家宮本

携帯を忘れて、正の家に戻る為に駅まで帰ってきたのでした。

線路を挟んでホーム越しにお互いの意見を交わし合いますが、肝心なところで電車が通過し会話が途切れます。

美代子がホームを渡ってきたところで、駅が停電し、待合所で美代子が被災地用にもっていたローソクを灯し、二人の思いを話合うようになります。

恋妻家宮本

陽平が作ってきた弁当を見ると、階段で転んだせいで形は崩れているものの美代子の好きなものばかりでした。

「美代子、おれはお前が作った味噌汁が飲みたい。」「死ぬ前に何か食べるならお前が作った味噌汁が飲みたいんだ。」

ファミレスで、ちょうどそのときに持っていた味噌汁を見ながら、「この人と結婚するんだな、この人の作った味噌汁を死ぬまで飲むんだなと思ったんだ。」という陽平の言葉に、美代子はポロポーズの言葉じゃない?と言いプロポーズの言葉の意味を知ります。

「今日を2人の新たなスタートして…えーと、」と言葉を必死に紡ぐ陽平の言葉をゆっくり待つ美代子。

陽平は思いついたように「タイムマシンがあったら27年前に戻って、自分に「宮本洋平、今お前の目の前にいるその人を絶対に離すんじゃないぞ。」って伝える」と言います。

すると美代子はついでに伝えてくれる?と前置きし、「今、あなたの目の前にいる男は、ちょっと優柔不断で頼りないかもしれないけど、それは誰に対してもどうすれば一番いいか真剣に悩んでるからなの。だから山下美代子、安心して宮本洋平の胸に飛び込みなさい。」と伝えます。

感動の涙を瞳に溜め、唇が重なるその寸前…。

停電が復旧し、周りには数人の人々。

後日、またいつものファミレスで何を注文するか陽平が悩んでいると、向かいに座る美代子はごゆっくりどうぞと「暗夜行路」を開きます。

そこへ料理教室で一緒だった門倉が偶然現れます。

結婚に期待しないという門倉に陽平は「僕は結婚して幸せです。」と言い結婚は良いものだと伝えます。

呼び出しチャイムを押して店員が来ると、美代子が陽平がどちらにしようか悩んでいた二つを注文し「分ければいいでしょ」と言います。

ふと陽平が振り返ると、ドンが妹と祖母、そして母親と4人で食事をしているのが見えます。

自分の言葉が本当に正しいのかは分からないが、自分の気持ちを優しさと共に伝え続けようと誓う。

恋妻家宮本

エンドロールでは、吉田拓郎の「今日までそして明日から」をみんなで歌う。

「恋妻家宮本」見どころ

安定のちょいダメ男、阿部寛

この人はほんとにこういう役が似合いますね。

もうそんな先入観が出来てしまっているのかもしれませんが、今回も安定のちょいダメ男です。

「海よりもまだ深く」(2016)でも一度だけ賞を取ったからと、自称小説家を続けるダメ男役でしたが、今回は責任を取るべく、教師になっているのでまだマシでしょうか。笑

決断力がないのは女性からすると頼りないように映るんでしょうけど、同じ男目線で見るとこういう人が一番多いような気がします。

責任がのしかかると、潰れてしまいそうな気がしてのらりくらりと逃げるんですが、覚悟が決まればそれなりにやるもんです。

男ってそんなものです。

遊川和彦監督

「家政婦のミタ」「女王の教室」「真昼の月」「GTO」など数々の脚本をこなした遊川和彦の初監督作品。

そのせいかどこかテレビ感がありました。

映画のようにあまり余韻を残さないというか、映画の中で完結してしまうというイメージでした。

セリフやアクションもそうですが、丁寧に分かりやすく演出がされているなという感じでとても見やすい映画です。

離婚届を見つけた陽平を狙う6カットや、ドンの家に家庭訪問の際に風で転がってくる西部劇で見るような藁のかたまり。

恋妻駅でメールを打つシーンでは、「みよこおれ」と入力すると予測変換には、「俺はお前が」と出てきます。

何度も打ち直したと思われる陽平の優柔不断さと想いがぐっと伝わるシーンですね。

ハートフルコメディではあるからこその演出だと思いますが、観客というよりは視聴者を意識しているようで、見る人と映画の距離の近さが心地良かったです。

正しさより優しさ

遊川和彦監督は「正しさよりも優しさ」をこの映画で語りたかったと仰っています。

今、世の中は「自分たちは正しいんだ。あいつらは間違っている」と思い込む傾向にあるので、少しでもそうじゃない人が増えてほしいなと思いました。「対立やあつれきもあるけれど相手のことを認めてできる限りの優しさを伝えましょう」「恥ずかしいけれどあえて愛を伝えましょう」といったメッセージを、映画を楽しく観ていただきながらも最後には考えてもらえるという、映画本来の素晴らしい特性を意識して描きました。(遊川和彦監督)

映画ナタリー

一番にそれを感じさせるのはセリフでも使われる、陽平とドンの祖母のシーンですが、ドンを少し特別扱いする陽平や、陽平の優柔不断な部分に合わせる美代子ドンを心配するあまり陽平に詰め寄るメイミーなど、本来の正しさよりも寄り添った優しさという部分が随所に見られました。

大円団のエンドロール

エンディングで吉田拓郎の「今日までそして明日から」のイントロが流れ始めて、急に阿部寛が歌い始めたかと思うと、順番に出演者が歌い始めます。

それぞれの背景に寄り添った箇所を、それぞれの役の感情で歌うので、やけにじんわりきます。

最後は立ち上がり、大合唱をするのですが、五十嵐役の菅野美穂だけ、身体の揺れ方がズレており、それをそっと直してあげる旦那(佐藤次郎)。もしかしたらここが一番のほっこりポイントかもしれません笑

最後に

原作者というより、いまを生きる迷えるオヤジの一人として、本作を観て、たくさん笑って、

最後にじんわりと泣きました。

試写のあとの帰り道、気がつけば、ずっと口ずさんでいました。(重松清)

映画ナタリー

原作の重松清さんも試写会で映画を見て、遊川和彦監督の伝えたい部分が伝わったようなコメントを残していました。

年を重ねると、家族との付き合い方が分からなくなるときがあります。

そんなときは何も言わず一緒に居てみようと感じさせてくれる心温まる作品です。

あ、ラストシーンに用いられた「恋妻(こいづま)」駅は架空の駅でロケ地は、関東鉄道常総線新守谷駅だそうです。

原作も是非お楽しみください。

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