“死刑にいたる病“は、
マインドコントロールに長けた殺人鬼がいたら、どんなことをするのかという思考実験的なフィクションだそうです。
見ていて、主人公で殺人鬼の榛村の異常を感じずにはいられません。
阿部サダオさんがほんとに怖い。
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目次
“死刑にいたる病”
公開 | 2022年 |
監督 | 白石和彌(ひとよ、彼女がその名を知らない鳥たち) |
原作 | 櫛木理宇(殺人依存症、骨と肉) |
本編 | 129分 |
出演 | 榛村大和:阿部サダヲ(少年期:田中仁人) 筧井雅也:岡田健史(中学生時:吉浦慶一) 金山一輝:岩田剛典(幼少期:松藤史恩) 加納灯里:宮﨑優 筧井和夫:鈴木卓爾 筧井衿子:中山美穂(少女期:森悠華) 根津かおる:佐藤玲 佐村:赤ペン瀧川 クラタ:大下ヒロト |
“死刑にいたる病”あらすじ
物語は、平凡な大学生・筧井雅也(岡田健史)がある日、一通の手紙を受け取るところから始まります。
手紙の送り主は、連続殺人犯として逮捕され、現在死刑囚として収監されている榛村大和(阿部サダオ)でした。
榛村は雅也に会いたいと伝え、家族のことで鬱々としていた雅也は会うことを決意します。
概ねの事件の犯行は認めていましたが、最後の事件は自分ではないと訴え、真犯人を見つけ出してほしいと雅也に依頼します。
雅也は興味を抱き、榛村の過去や彼が関与したとされる事件について調査を開始します。
榛村が切り盛りするベーカリー『ロシェル』に中学生のころよく通っていた雅也は事件の内容を聞き、自分のことも狙っていたのではと聞いてみるが、榛村は中学生には興味がなかったと告げます。
高校生ばかりを狙って犯行に及んでいたが、最後の被害者根津かおる(佐藤玲)だけは26才と年齢が高く、遺体を隠さず放置したり、爪がはがされていないなど、犯行状況も異なっていました。
調査を進めるうちに、榛村が子供時代に親から虐待を受け、支援する女性の養子となったこと、更には雅也自身の母親も同じ女性の養子であり、榛村と親しかったことが判明します。
自分の本当の父親は榛村ではないかと疑う雅也。
榛村も否定はしなかった。
殺人鬼の息子だと思うと逆に自分に強さを感じて、肩がぶつかり因縁をつけてきた会社員に暴行を振るってしまいます。
その後、同級生の加納灯里(宮﨑優)と関係を持ってしまいますが…。
“死刑にいたる病”見どころ
榛村大和
劇中で雅也がこぼす、「みんな彼を好きになる」という発言通り、榛村大和のことが好きになり、かばうようになります。
それは無意識に人を操る能力に長けており、どうすればその人に近づけるかを知っているからでした。
マインドコントロールとも言える能力と情報取集で、人の心にするっと入っていきます。
被害にあった高校生も、
バイトしてるスーパーに通い詰めて、挨拶を交わすようになる。
↓
バイト前に行くカフェを調べて、偶然のふりして声かける
↓
「この前カフェで会いましたね」と話しかける。
↓
カフェとスーパーで顔を合わせるようになり関係性を深め→犯行
人を残虐に扱うことでしか喜びを見いだせない。
榛村は幼少期の親の教育で形成されたサイコパスでした。
人権活動を行う榛村桐江の養子になり、表向きの社会性を学ぶが、中身は変わらなかった。
色んな方も書いてますが、中々のシリアルキラーでした。
映画の方での描写はまだ、目を背けるほどではなかったですが、原作は中々重たいものがあるそうです。(まだ未読です。)
その凄惨な部分よりも、人を操って何かを遂げようとする流れに魅力を感じました。
病とは?
病が何か?の描写はされていませんが、「死に至る病」という本があり、
「死に至る病とは絶望のことである」
という一節があります。
「死に至る病」に当たる「絶望」とは、「自分を見失った状態」「本来の自分から目を逸らした状態」のことと言われており、自分の本質を見つめずに「絶望」したままでいると、「精神の死」が訪れてしまうそうです。
そしてその救済は信仰だとも記されています。
人の精神安定のためには何かよりどころが必要だということでしょう。
榛村にとってのそれが、人に対する『マインドコントロール』や『虐待』に繋がっているんでしょう。
しかし、そんなことが認められるわけもなく、榛村にとっての心を満たす行為は「死刑にいたる病」と言い換えられているのではないでしょうか?
本作には人間のエゴや弱さの中での「病」とも呼べるものがたくさん出てきます。
- 殺人者の息子かもしれないという特別感
- 大切な人の一部を持っておきたいという衝動
- 誰を傷つければいいか決めさせる支配感
- 男をとっかえひっかえしてしまう依存心(榛村の生みの親)
- 自分で決断出来ない依存心
心の病気や気持ちの整理が出来ないことに名前が付く時代になっています。
これらすべてが病という訳ではありませんが、ストーリーの中で充分不安を煽る材料になっています。
“死刑にいたる病”ネタバレ感想
シリアルキラー要素もありますが、バイオレンス重視ではなく、ストーリーが楽しめる作品だなと感じました。
榛村のサイコパスな部分に胃がひゅんとなりながらも、その異常さが直接的なものだけでなく、人をコントロールしながら自分の欲を満たしていくところが面白くもありました。
病というテーマで作品が進む中で、気になったのは後継者の育成もしていること。
もしくは病の感染と言ってもいいかもしれませんが、榛村が父親かもしれないと思った時の雅也の行動が暴力的・好戦的になっていたこと、また灯里が、雅也の傷口を舐めるシーンやその後の強引に雅也が灯里を押し倒すシーンにも異常を感じました。
榛村という異常者(病)が感染を拡大させるためにたくさんの手紙を書き、会うことで支配していこうとする。
最終的には灯里が感染(後継者)として開花したような描写もありましたね。
この後、榛村が殺されてしまうのか、その逆になるのか、共存の道もあるのか。
小屋や爪の処分をしたのは、自分の最後の後始末でしょうけど、後継者が見つかったからなのかもしれませんね。
っていうか岩ちゃん(金山一輝役)最初全然わかりませんでした。
暗い人急に出てきたなと思って、キーパーソンでしょうけど犯人とかでは無さそうと思って見てたんですけど、割と最後の方まで分かりませんでした笑
実は白石監督もパンフレットインタビューで、
「自分の作品のなかでもエンタメに徹している」
「フィクションらしいフィクション」
と語っており、さらに、「コメディに転化する瞬間もあるかも」とまで言っていいます。
すべてが繋がっている感や人の心情の吐露がシリアスでありながらも少し、オーバーに進んでいくのが監督のいう「エンタメ」なんでしょうか。
小学生の女の子の顔面を両足で踏み続けたってとこはきつかった。
野菜をパンチしてる音だと言い聞かせて見てました。
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